[金] ゆらぐ政教分離の原則(金光教と浅口市)

憲法違反

新興宗教である金光教,お膝元の岡山県浅口市を舞台に,憲法第二十条及び憲法第八十九条に違反する事案が発生した。

なお,憲法第二十条は以下のとおり。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

続いて,憲法第八十九条は以下のとおり。

第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会の得た補助金

令和元年のことである。「大谷人づくり・まちづくり研修事業補助金」として,浅口市は「大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会」に 450,000円を交付した。

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図1. お金の流れ

この補助金については,浅口市大谷地区まちづくり事業補助金交付要綱(令和4年3月22日)に示されているとおり,住民等の福祉の増進に寄与するための補助金である。

第三条の3には補助の対象外の事業について明記してある。

3 補助対象事業が、次の各号のいずれかに該当するときは、補助の対象外とする。
(1) 営利を目的とするもの
(2) 特定の個人、団体、企業又は法人のみが利益を受けるもの
(3) 政治、宗教、選挙活動に関するもの
(4) 国、地方公共団体及びそれらの外郭団体等から他の補助金等の交付を受けているもの
(5) 単に地区住民の交流や親睦を図ることを目的とするもの
(6) 公序良俗に反するもの

第三条の3

特定の個人,団体,企業又は法人のみが利益を受ける事業は対象外であり,特に宗教活動に関する活動も対象外となっている。

大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会は補助金で何をしたか

さて,大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会は浅口市から補助を受けた 450,000円を何に使ったか。なんと大半の補助金をちょうちん代として使っている。その額,218,130円。驚くべきことには,そのちょうちんには金光教のシンボルが大きく描かれていた。金光教の全国信徒会,霊地信徒会(いずれも宗教団体)が横断幕を設置している通りの両側,13箇所にこのちょうちんを掲揚したのである。補助金が全くの宗教活動のために使用された事例である。この行為は憲法20条及び憲法89条に違反している。

大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会

浅口市が積極的に特定の宗教に対して援助した事例であるが,当然,浅口市職員措置請求により監査が行われた。監査人たちは,大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会代表者等へ詳細説明を求め出頭依頼を行ったが,なんと協力が得られなかったという。

「大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会」は任意団体であるが,会長は N 氏である。2010年に2代目の会長に就任している。事件が起きた令和元年時も会長であった。

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図2. N 氏とは誰か?

全国使徒会協力会

金光教にはさまざまな団体があるが,そのひとつに全国使徒会協力会がある。ちょうちんが設置された箇所にあった横断幕のひとつは全国使徒会のものであったが,全国使徒会協力会はその関係団体と思われる。この全国使徒会協力会委員は各教区から10名の特選委員が選出されているが,令和元年段階の名簿にN氏の名前が載っている。教区名は「東中国」,教会名は「本部」となっている。金光教の全国使徒会協力会の特選委員 N 氏と先述の大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会の会長のN氏は同一人物であろう。

監査の判断

浅口市にとっては金光教の言うことには耳を傾けないといけないのかもしれない。しかし,国やその関係組織が特定の宗教団体を贔屓にすることは憲法違反だ。

今回の事件に関し,監査人のひとりは「ちょうちん設置に係る経費218,130円、及びアンケート実施に係る経費150330円」を市に返金するよう,大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会に求めている。

本来であれば,450,000円全額返金するべきだろう。そもそも,この「大谷地区元気いっぱいまちづくり協議会」に補助を行うという判断自体が間違っている。この任意団体の会長が金光教の信徒であることは,当然,市はわかっていただろうし,ちょうちんを作ることがわかった段階で,そこに金光教のシンボルが朱で大きく描かれるだろうことも十分予見できたはずである。にもかかわらず,黙認したというのは,金光教と浅口市の関係がぬきさしならないものになっていることを表しているのではないか。

監査公表では,監査人は補助金の返還について述べているが,浅口市の判断の誤りについては言及がないのが残念だ。今回の憲法違反の事例の発生を教訓に,浅口市には特定の宗教に肩入れすることはよしていただけたらと思う。浅口市は,金光教以外にもさまざまな宗教的背景をもったひとびとが暮らしていはずである。

浅口市は金光教のための市ではないはずである。

資料など

  • 浅口市監査公表第5号 [pdf]
  • 羽賀祥二 (著)「明治維新と宗教」 (法蔵館文庫) [Amazon]

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