[読了] 苦しみは他人にわかる言葉にして,よおく狙って受け止めてほしい人に放り投げないといけない。(緑川ゆき「夏目友人帳5」花とゆめCOMICS)

夏目友人帳,第5巻。

今回は夏目の高校の友人たちがたくさんでてくる。そのうちのひとり田沼が思う。夏目は一体どんな世界を見ているのだろう。家の天井に泳ぐ魚が見える。田沼も見えるが,夏目も見える。ふたり以外には見えないものだろうが,ふたりには見える。けれども田沼は思う。夏目と自分とではちがうものを見ているのではないかと。夏目は一体どんな色を見ているのだろう。

いつか,話してくれるだろうか。

そう田沼は思う。

これって,妖が見える見えないの話だけじゃない。それぞれのひとはそれぞれが何かにつまづいて,何かに苦しんで,けれども,それと付き合ったり,突き飛ばされたりしながら生きている。苦しんでいるひとは他人に心のうちを明かさない。自分の苦しみを言葉にしてしまうことにとてもじゃないが耐えられない。だから隠す。

苦しむひとを,となりで心配しながら見ているひとがいる。そんなひとはたぶん田沼のように思う。いつか,話してくれるだろうかと。

苦しみは他人にわかる言葉にして,よおく狙って受け止めてほしい人に放り投げないといけない。そうでないと他人はそれを受け止められない。言葉が受け止められなかったら,それを口にしたひとは,もう耐えられない。だから,時間がいる。言葉にして,放り方を考えて,放り投げる相手を探す時間がいる。

夏目友人帳を読んで,そんなことを思った。

  • 緑川ゆき(著)「夏目友人帳 5 」(花とゆめコミックス) [Amazon]

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