
どこからどう見ても猿ですね。多くの神社では,狛犬が拝殿を守っています。たまには猪が守っていたりします。しかし,猿とは!
この神社は中山神社。岡山県津山市にあります。今昔物語に「生贄を喰らう猿」という物語がありますが,その物語の舞台が今は中山神社のたつ土地だったよう。
今は昔のことですが,この地域では一年に一度,猿に若い娘を捧げるという習わしがあったそうです。捧げて猿がどうするかといえば,猿がひとの娘を調味料をつけて食べてしまうと言います。
この習わしを耳にした旅の男が,今年,生贄に捧げられる娘の代わりに自分がなろうと言い出します。男は娘の代わりに長櫃に入ります。宮司たちが長櫃を猿のもとへと運びます。猿が長櫃を開けると,犬が飛び出し,猿たちを噛み殺します。男はリーダーの猿を殺そうとしますが,まさにそのとき,宮司に「猿を殺してはいけない」という神託が降ります。
男は猿を殺すことはしませんでした。その後,この習わしはなくなり,男は助けた娘と一緒になり,末長く仲良く暮らしたということです。めでたし,めでたしというお話です。
この猿を祀っているのか,中山神社の奥には猿神社があります。猿神社の祠は大きな磐座に置かれています。つい最近まで山の木は燃料として使われていたので,今のように鬱蒼とした森は人里近くには無かったのではないかと思います。ですから,猿神社のあるところも昔はもっと明るかったんじゃないかと思います。もちろん,人間が入ってくる前は鬱蒼とした森で,そこにはニホンザルがいたことでしょう。しかし,人間が入ってきてすぐに木々は伐採され,猿たちも棲家を追われたことでしょう。論文によると,昔は日常的ではないにしろ,猿を食用としていたようですから,ひとに食べられてしまった猿もいたのではないでしょうか。
今昔物語では猿が人間を食べるはなしになっていますが,事実は逆で,人間が猿を食べていて,その罪悪感から,主と客が転倒して,上のようなおはなしが作られたのではないかな。

コメント