神道政治連盟
神道政治連盟という組織があります。これは神社界を母体とした政治団体で,夫婦別姓制度の危険性の主張,教育勅語の普及活動を行っています。靖国神社に祀られる戦没者たちに国家として儀礼式を行うことを主張しています。
宗教関係者が政治活動を行うことは問題はありません。問題なのは,国やその機関が特定の宗教に肩入れして,その教えを広めるようとすることです。日本国憲法の第二十条をみてみましょう。
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
ここでいう「国及びその機関」には首相や大臣も含まれます。首相や大臣には憲法を守る義務がありますので,首相や大臣が靖国神社で行う宗教的儀式に参加することは憲法違反となります。
神政連国会議員懇談会
ところで,神社政治連盟の内部組織に「神政連国会議員懇談会」という組織があります。神政連国会議員懇談会といえば,森喜朗の「神の国」発言があった会合です。
ややもすると政府側、いま私は政府側におるわけでございますが、若干及び腰になることをしっかりと前面に出して、日本の国、まさに天皇を中心としている神の国であるぞということを国民の皆さんにしっかりと承知をして戴く、その思いでですね、私達が活動して三十年になったわけでございます。比較的私達の同期というのはしぶとくて、結構国会に残っておりますのは、神様を大事にしているから、ちゃんと当選させてもらえるんだなあと思っているわけでございます。
森喜朗「神の国」発言
森総理の発言はその意味するところが,よくわかりません。問題であるようにも思えるし,問題がないようにも思える,不思議な発言内容です。
問題であるのは,森喜朗は当時,内閣総理大臣であったという,その一点です。森総理が自分で語っているとおり,森総理は政府側におり,特定の宗教を応援する活動をするのは間違っています。
大臣が神政連国会議員懇談会に参加してよいのか
神政連国会議員懇談会は今も活動しており,269名の国会議員が所属して活動しています。そのなかには国会議員でなくなった岡山県の橋本岳も数に数えられています。大臣を務めている加藤勝信も含まれています。加藤は財務大臣,内閣府特命担当大臣(金融) デフレ脱却担当です。
このような会,特定の宗教団体が自分たちの信じるところを実現してくれそうな
議員たちを後押ししようという,神政連国会議員懇談会に現職の大臣が参加していることは,憲法二十条の精神に反していると私は思います。首相や大臣になったら,このような会からは一旦脱会し,中立な立場で国の仕事をしていると言えるようにすべきでしょう。
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