1月1日は,いわゆる天皇の人間宣言が発せられた日。

概要 このページでは「今日は何の日?」をテーマに,今日生まれたひとや,今日あった歴史的出来事について書いていきます。昔のことを思い出し,それを題材に周りのひとと会話するきっかけづくりにお使いください。毎日提供!(たぶん)

今日は何の日

人間宣言

1946年(昭和21年)1月1日,昭和天皇が詔書を発しました。いわゆる天皇の人間宣言です。

朕ト爾等国民トノ間ノ紐帯ハ、終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神トシ、且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニモ非ズ (文部省「国体の本義」)

この詔書では,「天皇ヲ以テ現御神」という考えは「架空ナル観念」と述べられています。天皇が現御神であるというのは,文部省「国体の本義」によれば,天皇は高祖高宗と一体であるという考え方をいいます。歴代天皇は古代にも活躍し,大化の改新で日本を天皇中心の国とするなど,大きな役割を果たしました。日本人の神概念から言えば,彼らはおそれおおいという意味でのカミでしょう。

日本人の神概念

ここで本居宣長の古事記伝から,日本人の神の概念をみておきましょう。以下は,わたしが現代の言葉に直してみたものです。

「神とは一体何なのか」と問われたら,大昔の文書にある天地創造の神々であると言えるし,神社のごほんぞんも神と言えます。もっといえば,ひとだけでなく,鳥や獣,草や木,海や山など,いろんなものの中で,並外れた力や特徴をもつもの,畏敬の念を抱かせるものも,わたしたちは「神」と呼んできました。(本居宣長「古事記伝」)

本居宣長がいうような神の概念であれば,天皇が神であるといっても,全然おかしくないわけです。しかし,問題なのは,歴代の天皇と現在の天皇とは一体,同じだというのが現御神という考え方です。こう考えると,歴代の天皇のすさまじい業績すべてが現在の天皇に引き継がれていることになりますが,それはまさに「架空ナル観念」でしょう。

架空なる概念の本体

昭和天皇が否定したのは,天皇の神性ではなくて,歴代の天皇と現在の天皇とは一体という箇所だったと思われます。あえて歴代天皇と自分を別にすることで,歴代天皇の神性をまもったとみえます。歴代天皇と現在の天皇が一体であるならば,現在の大敗という状況は現在の天皇だけではなく過去歴代の天皇の威厳さえも霧散させてしまうでしょう。ここで,歴代天皇と現在の天皇が一体でないということで,過去の天皇の業績に傷がつかないようにしようという意図があったのではないでしょうか。

神性は消えたのか

天皇の人間宣言の後,昭和天皇は国民に受け入れられていきました。昭和天皇は侍従に,「自分がみんなと同じ体をもっているからといって,同じ人間だと思ってもらっては困る」という意味のことをおっしゃっていました。歴代天皇の威光があってもなくても,天皇として生きるには,そのような気概をもっていなければ難しいのでしょう。昭和天皇自身,自分に対してある種の神性をみていたのではないかと思います。

近年,皇族の方が身内をさして「生身の人間」と発言されることがありました。もう,今の時代には天皇の神性をみることはできないのでしょう。

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