[ 干支の話 ] 2025年は本来は申年か午年?(十二辰のはなし)

十二辰

十二辰は,古代中国で天球を分ける仕方の一種です。天の赤道を12等分し,等分したそれぞれの部分に,十二支が当てられてました。十二支とは,子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥のことです。図1のように,天を12等分し,子から亥まで,時計まわりに置いていきましたこのような天球を分ける方法を十二辰といいます。

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図1. 十二辰

この十二辰を使って,年の記録をする方法も考えられました。木星の公転周期はおよそ12年です。もう少し正確に書くと, 

11.86155…11.86155… 年です。古代中国では,この木星が天球のどの位置にいるかによって,年を記録していました。紀元前の話です。

しかし,木星の動きは十二辰でいうと反時計回りです。年が,子,丑,寅,卯・・・と進まずに,卯,寅,丑,子・・・と進むことになります。ここで木星の動きに合わせて,十二辰を修正して,十二辰の表記を反時計回りにすればいいのではないかと思うのですが,古代中国のひとは別の方法をとりました。

架空の星「太歳」

木星の動きと逆の動きをする架空の星を作ったのです。その架空の星を「太歳」といいます。図 2のように十二辰を半分にする直線を引き,その線と対称の位置に「太歳」があると想定したのです。青い丸が太歳で,赤い円が木星です。木星は反時計回りに移動しますが,太歳は木星と線対称に位置をとりますので,太歳は木星とは逆方向,つまり,時計回りに動きます。こうして太歳の位置をその年の位置とすると,太歳は十二辰上を子,丑,寅,卯・・・と期待するように進むことになりました。よかった,よかった。

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図2. 「太歳」の導入

ずれていく暦

ところで,話は変わるようですが,地球の公転周期はおよそ365.25日です。ぴったり 365日ではありません。このため,わたしたちの使っているカレンダーと実際の季節が1年で .25日ずれるわけです。そこで4年に一度,うるう年をつくって,このずれを吸収しています。このことについては以下の記事に詳しく書きましたので,ぜひ読んでください。

  • [記事] うるう年。どうして4年に1度,2月が1日多くなるのか? [note]

同じことは木星の公転周期にも言えます。木星の公転周期はおよそ12年といいました。もう少し正確に書くと, 

11.86155…11.86155… 年です。ぴったり12年ではないのです。ですから,このままほっておくと,いずれ私たちの暦と太歳の位置にずれが生じます。

計算してみましょう。

12÷(12−11.86155)=86.67389⋯12÷(12−11.86155)=86.67389⋯

およそ86年で1辰ずれることになります。暦のうえでは酉年なのに,太歳の位置は戌年ということがあるわけです。古代中国では,紀元前 95年にこのずれを修正するために,その年は暦の上では酉年でしたが,戌年にしています。しかし,これ以降,修正はされていません。機械的に,子,丑,寅,卯・・・,子,丑,寅,卯・・・と続けています。今が 2024年ですから,2,119 年,ずれがあるのを放置してきたことになります。それではどれくらいずれているかみてみましょう。

2119÷86.67389⋯=24.44796⋯2119÷86.67389⋯=24.44796⋯

24.44796⋯24.44796⋯ ,ずれています。24 というのは,12 の倍数です。

え!ほったらかしている間に,2025年,ずれがふたまわりして元にもどったということになりますね!すると,これから 86年間は古代中国で定めたとおりの暦と天体の関係が保たれるということでしょうか?

そうだとしたら面白いですね。

実際の木星の位置を調べて,それが古代中国のどの星座と対応するのかが分かれば,古代中国で考えられたとおりの暦ができるはずです。ある日の何時に木星がどの位置にあるのかは python でいろいろなライブラリがあるので簡単に計算できますし,天体関係のサイトでも確認できます [Link] 。

本当に元に戻っているのかたしかめてみる

さて本当に元に戻っているのか確かめてみましょう。来年は巳年です。本当に元にもどっているならば,太歳は巳年にあり,木星は太歳と線対称の位置にある戌の位置にあるでしょう。

戌の位置には「翼宿」という名前の星座があり,それは現在でいうおとめ座付近にあったといいます(ただ,この辺りの対応が本当に正しいのかは検討が必要です)。

ここで2025年3月20日午前0時,木星の近くにある星座を見てみましょう。Stella Theater WEB というサイトで見てみました。それがこちら [Link] です。

残念ながら,木星の近くにあるおとめ座ではなく,おうし座でした。ということは
,まだ暦は,ずれたままなのでしょうか。

十二辰に引く線ですが,資料によって引き方が異なります。図2の引き方は戦国のときの引き方ですが,図3のように引く方法もあります。

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図3. 補助線の別の引き方

この引き方でしたら,木星は申の位置にあります。申の位置にはしし座があるそうですが,2025年3月20日午前0時,木星の近くにしし座はありません。うーん。

2025年は本来は申年か午年?

2025年,木星はおうし座にあります。おうし座付近の星を昴宿(ぼう)といいますが,これは羊の位置にあたります。この木星の位置から本来あるべき干支を考えると次のように考えることができます。

図2の線の引き方を採用するとすると,2025年は申年になります(図4)。

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図4. 2025年は羊年?

図3の引き方を採用するとすると,2025年は巳年になります。

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図5. 2025年は午年?

検討すべき点はまだまだありますが,どうも,現在の暦は木星の位置,正確には太歳の位置とは一致していないようですね

今後の課題

ただ,上の推測は三つの仮定のうえに行ったもので,本当に正しいのどうかはきちんと検討しなければなりません。どなたが資料などごぞんじでしたら,教えていただけませんでしょうか。

  1. その年の木星の位置を計算するとき,今回は春分の日と仮定したが実際には何月何日の何時何分を基準にするのか,わからない。
  2. 木星の位置から太歳の位置を計算しますが,その時,太歳の位置にある星として,斗宿,牛宿,畢宿などがありますが,これが架空の星なのか実在する星なのかがわからない。
  3. 十二辰に引く線の引き方には何種類かあるようだが,どれが正しいのかわからない。

上の3つがわからず,もやもやしています。様々な文献に詳細が書かれていると思うのですが,こんな文献を読んだらいいよという情報がありましたら,下のコメント欄にお願いします。

また,上の記事の内容に関して,完全に間違えている箇所もあるかもしれません。
その場合は教えていただけるとうれしいです。

参考にした書籍

稲田 義行 (著)「現代に息づく陰陽五行」(日本実業出版社)[Amazon]

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