概要 この記事は,研究論文をもとに,過去の人々が現代のわたしたちに伝えようとしているメッセージについて考えることを目的としています。

災害のリスクの低い土地がある
高田知紀・桑子敏雄 (2016)の研究がおもしろい。
- 高田知紀・桑子敏雄 (2016)の研究論文 [Link]
和歌山県 398 社の神社を対象に,どれくらい災害のリスクがあるか調べた。蔡鍔のリスクは南海トラフ巨大地震の津波シミュレーションデータをもとにしている。結果,イソタケル系神社、熊野系神社、 王子系神社の多くは、自然災害のリスクが低い土地にあることがわかった。
イソタケルとはスサノオの息子で,日本の土地に植林をした神。第一著者の高田さんは,2012 年には東日本大震災で災害をまぬがれた神社に,スサノオ系と熊野系が多いことを報告している。
2016 年の調査と 2012 年の調査で共通しているのはスサノオ系と熊野系の神社が災害リスクの低いところに建てられているということだ。この結果は,もちろん,スサノオやイザナミの霊力によって,神社のある地域が被災を免れているというわけではない。
古代の人々から現代の私たちへのメッセージ
高田知紀・桑子敏雄 (2016)が例としてあげているように,古代から被災した神社はより安全な土地へ遷宮しているからだ。
また、古代における災害対応としての遷宮の例では、 兵庫県神戸市の生田神社をあげることができる。生田神 社は神功皇后元年(西暦 201 年)の建立当初、砂山(現 在の布引山)に祀られていた。しかし、799 年に発生した 大洪水により山麓が崩壊し、社殿が傾いたため、生田村 の刀禰七太夫という者がご神体を背負い、現在の鎮座地 に祀ったという話が伝わっている。 (p.150)
高田知紀・桑子敏雄 (2016)
神社というのはひとびとに大切にされており,その土地その土地で安全なところに建てられているものだということがわかる。仮に被災したら,より安全なところに遷宮までする。
ということは,神社がそこに立っているということは,その土地が地震や津波などからも安全な土地なんですよという古代のひとびとからのメッセージとも読み取れる。
過去のひとびとの声に耳を傾けながら,必ずくる南海トラフ大地震に向けて,どうにかして生き抜く方法を考えていきたい。
- 佐々木秀斗(著)「小学生博士の神社図鑑 ぼくの近くにはどんな神さまがいるの?」(桜の花出版) [Amazon]
コメント